眠る街の起こしかた | 札幌PARCO
昼間の喧騒が嘘のような、夜の大通公園。見慣れた景色はカメラを向けると姿を変え、街はふたたび目を覚ます。まだ見ぬ扉を開けてくれるのは、いつだって好奇心だ。
札幌のクリエイターたちが、街の新しい一面を切り取るこの企画。PARCO Session では、美容師のサカナとマイが夜の街へ。「髪型にしても服にしても。(流行が)沢山ありすぎるから、自分が正解、ってところに持っていきたい。」と彼女たちは言う。PARCO Short-short ではライターの吉野内が口語と文語を錯綜させる語り口でショートショートを書き下ろす。
夜の大通公園で、それぞれが出会った景色とは。
- Photographer
- Mai Kimura
- Art pieces,Stylist
- MASHIRO
- Editor
- 吉野内だいち
- Hair&makeup,Model
- サカナ〈MATO〉
────マイ〈MATO〉
- Coordinator,Planner
- NEVER MIND
────THE BOOKS
PARCO Session | SAKANA & MAI

PARCO Short-short | 「精神くらいは、夏だし全裸で。」
1.「全裸(精神)で公園で爆睡男」
parco{名}…公園、憩いの場
43.0606287°N,141.3530266°E 海抜25メートル、
横に長すぎる大通公園で、精神的に全裸の男が仰向けで寝ていた。男を山だと思ってか、小さな虫らが集まって、降りつ登りつ騒ぎつつでも、虫らには、男の身に纏った衣装は透け、室内の蛍光灯に焼けた蒼白い皮膚すら透けてその奥の精神が見えている。
「おまえはおれよりこの公園を知ってんのかyo」
「かなわねっす、蟻がとう」
噛まれた。痒い。
噴水は夜には上がらないこと。
昼の遊具は子供の物。何歳(いくつ)になっても心のうちの何割か、子供の心に空けておき、ふざけていたいし海豚や鯨の真似がしたい!深夜の蝶は意外と美しい。
未だに男の夢の中、女の子二人、辞書を覗いて呟くには
「パルコはイタリア語、意味は公園…」
男は蝶を飲み込んだ。
2. 「蝶を飲み込む、」
farfalle{名}…蝶
男の外見は煌びやかでも、その内側には灰色の扉のエレベータが同じところを往復し、極端に彩度を欠いた、ただ明るいだけの光を頼りに生命を運行させている。あの美しい蝶を飲みこめば、おれは内側から輝き始めるだろう と、いうことで!
今夏、人も思いもデザインも。全てを纏って、〈MATO〉が始動。
MASHIROのクチュールを纏った今企画のヘアスタイリスト兼モデル(蝶)のサカナとマイにインタビュー。街をよく知る二人の視界を共有していく。
―どうすれば街は自分のものに?
サカナ「私は美容師。だから街を歩いているとお客さんと会う。行きつけの店もあるし、イベントに顔を出したり…」
マイ「自分を知ってもらって、相手を知って…」
サカナ「そうそう。点と点が繋がっていく感じ。そしてその積み重ね。」
―流行に対しての立ち位置は?
サカナ「髪型にしても服にしても。(流行が)沢山ありすぎるから、自分が正解、ってところに持っていきたい。確信がないとぶれちゃうでしょ。正解ってないんですけど、お客さんからしたら正解と思ってもらえるようにしてますね。でもちゃんと雑誌とか見たりしますよ。そのうえで、です」
マイ「大事にしなきゃってのが半分と、自分の感性が半分。融合みたいな(笑)それでさらに可愛く、みたいな」
―流行を作っているのは誰なのか
サカナ「それはお客さん。結局、100%自分の意見を通すことってないので…お客さんによって立場も違うし。だから自分の感覚だけではできない。意外と寄り添い系なので…カウンセリングは大切にしていますよ。例えばなんでもいいですって言う人もいて。でもなんでもよくはないよな、と。なんでもいいってのは、その人の想像を超える必要がある。なんでもいいの裏側があって。」
マイ「確かに…!」
サカナ「そういう裏側をカウンセリングで読み取ったり。だって任せますって言ったって坊主にしたら怒るでしょ」
一同「笑」
―新店舗〈MATO〉の意気込みは?
サカナ「美容師ももう13年やってきて…初心に返ってその年月を良い形にしたい。数字とかじゃなくって、この人と働きたい!っていう仲間たちと、一つずつ。札幌で一番の美容室を」
マイ「成長…レベルアップと…自信に繋げたい…あとは…もっと人を喜ばせたいのと……」
成長、自信、人を喜ばせる、この三つが意気込みですか?
マイ「はい!!!!!(笑)」
3. 「日、没して誰やあいつ」
最も夕方が長い季節、それは夏、街はこっそりと暗くなっていく。19時の空は何色でもない。男はまだ寝ている。
夕染めされた綿雲から引いた茜と紺の合わせ糸を編み上げて作るMASHIROのクチュールは衣装でありながら、印象風景である。
夕涼みに興じる仕事や学校終わりの人々は彼女らを見て見ぬ振り、それよりも過ぎていく夏を謳歌する事に忙しい。夜は短いが、その分楽しい。
巨大なパルコ(公園)をランウェイにして、端のベンチに腰かけた彼ら全員が同時に瞬きをした瞬間にシャッターが切られ、ストロボが零れる。男はまだ寝ている。
「あそこで寝てるの誰?」
4. 「マジでごめん」
蝶が教えてくれたこと。「男の生まれる前、大通公園には巨大な人間の像が建っていたって。30年前に壊されちゃって。像だけど、お洒落してて、かっこよかった。けどこないだね、またその像を建てようって言って、公園の人が頑張って作り直したの。けど、面影はあっても全く別人。焼き直しよりひどかった。あれなら新しいのを作った方がまだマシ!だから、あなた、その像壊してきてよ」
男は半分眠った足取りで、そんなのあったかなと頭を掻いた。言われた場所へと赴くと、おじさんの像が建っていた。ポケットからショベルカーを取り出すと、その像を粉々に破壊してしまった。
なんでも知っていると思っていたこの公園も、知らないことが沢山。街もかくありき。像の破片で遊んでいると、水鉄砲を持った柴犬二匹が駆けて来て、ワンワワワン。黙っているとワンワワワン、男は組み伏せられ、身包み丸ごと剥がされた。
「ワンワワワン(現行犯逮捕)!」
「ワワンワン(何とか言ったらどうなんだ)!?」
「…マジでごめんっす」
