emmaと観る『A-Z Homage to Takenobu Igarashi』展 | 札幌PARCO
五十嵐威暢(いがらし たけのぶ 1944-2025)は、 北海道滝川市出身の世界的に活躍したデザイナー・彫刻家である。代表作にニューヨーク近代美術館のカレンダー、カルピスや明治乳業、サントリーのロゴなどがある。1994年以降は本拠をロサンゼルスへ移し、彫刻制作に専念。北海道との関わりも深く、札幌駅の「JRタワー」のロゴ、「星の大時計」やコンコースの駅時計も手掛けたことでも知られる。PARCO との関わりは、1981 年にオープンした渋谷 PARCO PART3 のプロジェクトから始まる。
札幌PARCOでは、開業50 周年を記念し、2025年10月4日から11月10日まで、館内全体を舞台とした企画展『A–Z Homage to Takenobu Igarashi』を開催。
五十嵐氏と同じ北海道出身であり、モデル・経営者として活躍するemmaさんが、五十嵐氏が制作した数多くのアルファベット作品に彩られた札幌PARCOを巡る。
- Photo
- Yasu / sokoniaru(SHIDEN)
- Hair&Make
- Tsukushi Tomita
- Text
- 3KG
- Direction
- Sixtysix inc
時代を超えて愛され続けるPARCOの「五十嵐ロゴ」
五十嵐氏とPARCOの出会いは、1981年にオープンした渋谷PARCO PART3のプロジェクト。五十嵐氏が手掛けたシンプルで力強いロゴは、現在も吉祥寺や名古屋PARCOで外壁サインとして使用されている。
渋谷PARCO PART3 オープン時に五十嵐氏が製作した通称「五十嵐ロゴ」
emma「PARCOといえばこのロゴの印象がとても強いです。あの形も色も、もの凄く印象に残りますよね。わたしは昔からファッションが大好きで、学生時代は札幌PARCOに通い詰めていました。地元には洋服屋さんが少なかったので、雑誌に載っている洋服がたくさん並んでいるPARCOは、わたしにとって憧れの場所だったんです。」
PARCO社内で「五十嵐ロゴ」と呼ばれるこのロゴについて、札幌 PARCO の小林氏はこう語る。
「世代を超えて語り継がれる PARCO の文化を象徴する存在です。簡単に触れることのできない特別な存在であったため、社内企画だとしても気軽に使用することはできませんでした。」
今回の展示では、オリジナルの「P」「A」「R」「C」「O」「T」に加え、五十嵐氏の思いを受け継いだデザイナーたちが、「五十嵐ロゴ」の独自の規則性を踏まえながら再解釈し、残りのアルファベットを新たに書き起こした。
階段を進むたびに作品と出会う新体験
本展覧会の開催にあわせて「STEPS 207(ステップス ニーマルナナ)」と名付けた札幌PARCOの階段ギャラリーでは、B2Fから7Fにかけて、9フロアに及ぶ階段を使いながら、AからZまでのアルファベットを題材にした彫刻やグラフィックデザインの作品を展⽰している。札幌PARCOの階段フロアサインは、40年ほど前に五十嵐氏がデザインしたもの。今回、階段が展示場所の一つになったことはある意味必然であったとも言える。
emma「元々、アート鑑賞は好きなんです。作品を観ることで浄化されるというか。作家の方がどんな想いでその作品を作っているのか考えたりして。その作品を通して、作家の想いや人生と向き合う時間が好きですね。建築や空間を活かした作品、日常に溶け込むアート作品が好きなので、この階段での展示はとても観ていて楽しかったです。」
emma「写真の『E』は自分のイニシャルということもあってすぐに目につきました!鏡の『W』も可愛くて、思わず自分のスマホでも写真を撮ってしまいました。」
そして、アルファベット作品と隣り合うようにして、壁にはいくつもの言葉が並ぶ。これは多摩美術大学の学長を務めていた五十嵐氏が、東日本大震災をきっかけに、Twitter(現:X)上で発信した“つぶやき”をまとめた書籍『はじまりの風 五十嵐威暢のことばのいぶき』からピックアップした言葉たち。
emma「まっすぐに優しく心に響く言葉ばかりでした。“説得ではなく共感を”とか、“平凡な日常も、奇跡の瞬間の積み重ねであることを忘れないようにしたい”とか、つい意識しなくなってしまうことですけど、本当に大切なことですよね。どの年代の方にも響く言葉だと思います。」
SPACE 7 で出会う五十嵐威暢が紡いだデザインの軌跡
7Fの階段からTOWER RECORDS を抜けると、床には赤と緑のラインが引かれている。この赤いラインを辿っていくと、もう一つの展示会場である SPACE 7 に辿り着く。ここでは2025年2月に閉店した松本PARCOで実際に使用されていた「五十嵐ロゴ」のドアノブや、様々な素材で作られたアルファベット彫刻作品の展示、書籍『はじまりの風 五十嵐威暢のことばのいぶき』の制作過程が分かる貴重な資料などを公開している。
emma「わたしの推しアルファベットはもちろん『E』ですね。あとはツヤっとした彫刻の『Q』も可愛くて好き。手で描いているのが信じられないくらい緻密に描かれた作品の設計図といい、すごく見応えがあります。」
会場では五十嵐氏がデザインした時計やトランプを始め、ここでしか買えないアクリルキーホルダーやトートバッグなどの限定グッズも数多く展開。
emma「この時計は札幌駅の星の大時計ですよね。五十嵐さんがデザインしたことは今回知ったのですが、特徴的なのですぐに分かりました。あと、個人的にこのアルファベットのドリップコーヒーやポストカードが欲しくなりました!旅行に行った時は、こういったパックのコーヒーを買うことが好きなので、自分や友達のイニシャルを探してお土産にしたくなります。」
かぜのびコーヒードリップ ¥286
オリジナルトートバッグ(2種)¥3,850、ブラインドアクリルキーホルダー(6種) ¥880
時代を越える美しさ―emma が語る新たな挑戦とは
emma「デザインを勉強している学生さんやアートが好きな方はもちろん、普段アートやデザインに関わりのない方でも絶対に楽しめる展覧会だと思います。ビジュアルが可愛い作品ばかりなので、たくさん写真を撮りたくなります。どの作品も40年以上前に作られたものとは思えないデザインですよね。色褪せないというか、いい意味で懐かしい感じが全くしなかったです。」
彼女が見据える未来とは――。
emma「モデルを始めて10年、自分のブランドを立ち上げて3年が経ちました。五十嵐さんは50代を前にしてデザイナーから彫刻家に転身したと聞いて、新しいことは何歳からでも始められるぞと背中を押された気がしました。実はわたしも来年から新たなステップに進みます。ぜひ期待していてください。」
Information
- 展示名
- A–Z Homage to Takenobu Igarashi
- 会場
- 札幌PARCO SPACE 7(7F)、STEPS 207(B2F - 7F)、正面入口横(1F)
- 会期
- 2025年10月4日(土)- 11月10日(月)※会期中無休
- 時間
- 10:00 - 20:00 ※最終入場は閉場30分前まで ※最終日は18:00閉場
- 入場料
- ¥500(SPACE 7)、無料(STEPS 207)
- 主催
- 札幌PARCO
- 共催
- 五十嵐威暢美術館かぜのび
- 協力
- 金沢工業大学 五十嵐威暢アーカイブ
emma
2012 年、雑誌の表紙を飾りプロモデルとしてデビュー。
25ans をはじめ、さまざまなジャンルの人気ファッション誌のほか、カタログや WEB など数多くのメディアに毎月登場。
テレビやイベントでも活躍しながら、プライベートブランド ER(イーアール)のディレクターとしても精力的に活動している。
FIGARO.jp では、カメラを片手に海外や国内を旅する姿が見られる、連載企画「See the World」が好評。
Instagram:@okss2121